鹿やイノシシなどの動物と衝突したときはどうする?安全確保から車両の状態確認までの対処法
動物と衝突した場合、車を路肩などへ移動してよいのは「安全を確保でき、走行に支障がない場合」に限られます。ただし、けが人の救護、ハザードランプの点灯、警察への連絡を優先し、鹿やイノシシなどの動物そのものには近づかないことが重要です。
この記事のポイント
- 動物との衝突後は、二次事故を防ぐために安全な場所へ停車します。
- 車を動かす前に、けが人・後続車・車両の損傷を確認します。
- 走行に不安があれば自走せず、レッカー・ロードサービスを手配します。
今日のおさらい:要点3つ
- 動物との衝突事故では、まず人命と交通の安全を守ります。
- 車を動かしてよいのは、周囲の安全と車両が走行できる状態であることを確認できた場合です。
- 鹿やイノシシを含む野生動物には触れず、警察と道路管理者へ連絡します。
動物と衝突したら車を動かしてもいい?
この記事の結論
結論から言うと、動物と衝突した車が危険な位置に停止している場合は、安全を確認したうえで路肩や待避場所へ移動します。交差点内、車線上、見通しの悪いカーブ、高速道路の走行車線などに車が残ると、後続車を巻き込む重大な二次事故につながるためです。
- けが人がいる場合は、車両の移動より救急要請と救護を優先します。
- 車を動かす前に、タイヤ・ライト・ラジエーター周辺・液漏れを確認します。
- ボンネットが浮いて視界を妨げている、冷却水が漏れている、タイヤが損傷している場合は動かしません。
- 事故後は警察へ連絡し、野生動物が道路上に残っている場合は道路緊急ダイヤル「#9910」への連絡も検討します。
- 走行の安全性に少しでも不安があれば、レッカー搬送を依頼するのが確実です。
動物との衝突は、相手が野生動物であっても交通事故です。道路交通法第72条により、事故が発生したことを警察へ報告する義務があります。鹿やクマなどの大型動物との衝突では、車体の損傷だけでなく、乗員のけがや後続車との衝突が起こるおそれもあります。
たとえば、夜間の山道で鹿と衝突し、フロントバンパーが外れかけた場合、見た目には走れそうでも、部品がタイヤに接触する危険があります。この状態で走行を続けると、タイヤの損傷、ハンドル操作の不安定化、部品の落下を招きかねません。大切なのは、「目的地まで行けるか」ではなく、「数メートル動かしても安全か」を判断することです。
動物との衝突事故で車を安全に移動するには?
動物との衝突事故で車を移動する目的は、交通の妨げを減らしながら、乗員と後続車の安全を守ることです。車両の状態を確認せずに走り出すと、故障の悪化や二次事故につながるため、落ち着いて順番どおりに対応してください。
まずはハザードを点灯し、人の安全を確認します
衝突直後は、まずハザードランプを点灯し、運転者と同乗者にけががないかを確認します。後続車に異常を知らせ、追突される危険を下げるためです。
たとえば、助手席の同乗者が首や胸の痛みを訴えている場合、外見上のけがが軽く見えても、無理に歩かせたり車外へ移動させたりしないでください。意識がない、出血が多い、強い痛みがあるといった場合は、119番通報を優先します。なお、高速道路では車内にとどまること自体が危険な場合もあるため、周囲の交通状況を見ながら、ガードレールの外側など安全な位置へ避難します。
停車後に確認する項目は、次のとおりです。
- 運転者と同乗者に痛み、出血、意識障害がないか
- 後続車や対向車、歩行者を巻き込んでいないか
- ガードレール、標識、道路設備に損傷がないか
- 車が走行車線、交差点、踏切、カーブ内に残っていないか
- 動物が道路上に残り、ほかの車の危険になっていないか
周囲の安全が確保できたら、発炎筒や停止表示器材(三角表示板)を使って後続車に注意を促します。高速道路や自動車専用道路で停車する場合、停止表示器材の表示は法律で義務付けられています。設置する際は、後方から来る車に十分注意し、無理に車線上へ出ないようにしてください。
車を動かしてよいかは、短距離の安全性で判断します
車を動かしてよいのは、「安全な退避場所まで、低速で確実に移動できる」と判断できる場合です。一般道で後続車の通行を妨げる位置に停止してしまった場合は、可能であれば路肩や駐車帯へ移動することが、二次事故の防止につながります。
ただし、エンジンがかかることだけを自走できるかどうかの基準にしてはいけません。次の症状がある場合は、すぐにエンジンを停止し、ロードサービスへ相談してください。
- ラジエーター周辺から蒸気が出ている
- 赤・緑・青などの液体が地面に漏れている
- 水温警告灯、エンジン警告灯、油圧警告灯が点灯している
- タイヤがパンクしている、またはタイヤハウス内で部品が接触している
- ボンネットが浮いて前方の視界を遮っている
- バンパー、アンダーカバー、フェンダーが垂れ下がっている
- ハンドル、ブレーキ、ライトに異常がある
たとえば、イノシシと衝突してフロント下部が損傷している場合、ラジエーターや冷却ホースが破損している可能性があります。冷却水が漏れたまま走行するとオーバーヒートを起こし、エンジンの重大な故障につながります。結果的に修理費がかさむことにもなるため、無理な自走は避けるべきです。
110番と#9910へ連絡し、動物には触れません
車を安全な場所に止めたら、警察へ事故を報告します。野生動物との衝突は物損事故として扱われるため、事故の日時、場所、動物の種類、車両の損傷状況、けが人の有無などを伝えます。
道路上に動物が残っている場合や、死骸が交通の妨げになっている場合は、道路緊急ダイヤル「#9910」へ連絡し、道路管理者に対応を依頼します。#9910は、全国共通で24時間利用できる道路の緊急通報窓口です。
野生動物を自分で移動させる必要はありません。負傷した鹿やイノシシは、恐怖や痛みから突然暴れることがあります。角、牙、ひづめによるけがだけでなく、感染症のリスクもあるため、素手で触れたり、車内に乗せたりしないでください。警察、道路管理者、自治体の指示を待つのが安全です。
なお、ペットなど飼い主のいる動物と衝突した場合は、相手方との損害賠償の問題が生じることもあります。いずれの場合も、その場で自己判断せず、警察に状況を正確に伝えることが大切です。
動物との衝突後に確認すべき車両の状態とロードサービスの呼び方
動物と衝突した後は、外装の傷だけで判断せず、走行に関わる部品まで確認することが必要です。特に鹿やイノシシとの衝突では、車体の低い位置に強い衝撃が加わりやすく、バンパーの内側、ラジエーター、タイヤ周辺、アンダーカバーなどに見えにくい損傷が残ることがあります。
自走前に確認したい車の6項目
車を動かす前には、「視界・灯火類・タイヤ・液漏れ・警告灯・異音」の6項目を確認します。いずれも短時間で確認でき、重大な故障の見落としを減らせるからです。
- ボンネット、フロントガラス、ミラーに視界を妨げる損傷がないか確認します。
- ヘッドライト、ウインカー、ハザードランプが点灯するか確認します。
- タイヤの空気が抜けていないか、フェンダーや部品がタイヤに接触していないか確認します。
- 車体の下に液漏れや蒸気がないか確認します。
- メーター内の警告灯が点灯・点滅していないか確認します。
- エンジン始動時や低速走行時に、異音・振動・焦げた臭いがないか確認します。
確認にかかる時間は、およそ3〜5分です。ただし、夜間や雨天、交通量の多い道路では、車外での点検そのものが危険になります。その場合は目視できる範囲の確認にとどめ、ロードサービスへ連絡して指示を受けてください。
たとえば、日中に駐車場や広い路肩まで安全に移動できた場合は、スマートフォンのライトを使ってバンパーの下部を確認できます。一方、片側一車線の暗い山道で車外に出るのは危険です。自分で詳しく確認しようとせず、ハザードランプを点灯したまま安全な位置で待機するのが適切な判断です。
レッカーを呼ぶべきなのはどんなケース?
少しでも走行の安全性に不安があるなら、レッカー搬送を選ぶべきです。レッカーとは、自走が難しい車を専用車両で整備工場や指定の場所まで運ぶサービスです。無理に走行して損傷を広げるより、搬送費用も含めてロードサービスの補償内容を確認するほうが合理的です。
特に、次のようなケースでは自走を避けてください。
- 鹿などの大型動物と衝突し、衝撃が大きかった
- エアバッグが作動した
- 冷却水やオイルとみられる液体が漏れている
- バンパーやアンダーカバーが外れかけている
- タイヤ、ホイール、足回りに損傷がある
- ブレーキやハンドルの感触が普段と違う
- 警告灯が点灯し、原因が分からない
- 夜間や豪雨で、損傷状態を安全に確認できない
ロードサービスへ連絡するときは、「動物と衝突したこと」「現在地」「車種」「けが人の有無」「エンジンがかかるか」「液漏れやタイヤ損傷の有無」「搬送の希望先」を伝えると、手配がスムーズに進みます。現在地が分かりにくい山道などでは、近くのキロポスト(距離標)や電柱の番号、スマートフォンの地図アプリに表示される位置情報を伝えると役立ちます。
また、事故現場の全体、車両の損傷箇所、路面の状況、点灯している警告灯を写真に残しておくと、保険会社や修理工場への説明にも役立ちます。撮影は安全な場所から行い、車線上に出て撮影することは避けてください。
保険会社への連絡と修理の考え方
動物との衝突で車が損傷した場合、一般的に単独事故として扱われます。自賠責保険は物損を補償しないため、車の修理費については、加入している任意保険の車両保険の補償内容を確認します。
ただし、車両保険の種類、免責金額、等級への影響、契約条件によって対応は異なります。「保険を使えるはず」と自己判断せず、保険会社へ事故の連絡を入れ、契約内容を確認してください。修理の見積もりを取る前に、写真、警察への届出の受理番号、レッカーの搬送先を整理しておくと、その後の手続きがスムーズです。
たとえば、フロントバンパーだけが損傷しているように見えても、センサー、カメラ、レーダー、ヘッドライトの取付部まで損傷していることがあります。衝突被害軽減ブレーキなどの先進運転支援システムを搭載した車では、部品交換後に校正(エーミング)作業が必要になる場合もあります。表面上の傷だけで修理の判断をせず、整備工場で点検を受けることが安心につながります。
なお、修理費が少額の場合、保険を使うと翌年以降の保険料の上昇分が修理費を上回ることもあります。保険を使うかどうかは、見積もり金額と等級への影響を比較したうえで判断するとよいでしょう。
動物との衝突を防ぐために日頃からできること
動物との衝突事故は、起きた後の対応だけでなく、未然に防ぐための意識も大切です。日頃から次の点を心がけることで、事故のリスクを下げられます。
- 鹿やイノシシは、夕方から早朝にかけて活発に動くことが多いため、この時間帯の山道や郊外の道路では速度を控えめにします。
- 「動物注意」の警戒標識がある区間は、実際に動物の出没が多い場所です。標識を見かけたら、道路脇の茂みにも注意を向けます。
- 対向車や先行車がいない夜間の道路では、ハイビームを活用すると、動物の目の反射で早めに存在に気付きやすくなります。
- 鹿は群れで行動することが多いため、1頭が横切った後も、続いて別の個体が飛び出してくることを想定します。
- 動物を見つけたときは、急ハンドルで避けるのではなく、周囲の状況を確認しながらしっかりブレーキをかけることを基本にします。急な回避操作は、対向車線へのはみ出しや路外への逸脱、横転など、より重大な事故につながるおそれがあります。
また、万一に備えて、発炎筒の有効期限を確認し、停止表示器材、懐中電灯、手袋、反射材付きのベストなどを車に積んでおくと安心です。加入している任意保険のロードサービスの連絡先や、JAFの会員証をすぐに取り出せる場所に保管しておくことも、いざというときの落ち着いた対応につながります。
よくある質問
Q1. 動物と衝突したら、すぐに車を動かしてもよいですか?
安全な退避場所まで低速で移動できる場合は、動かして構いません。ただし、けが人がいる、液漏れがある、視界が悪い、タイヤや部品に損傷があるといった場合は動かさないでください。
Q2. 鹿と衝突した後、鹿が逃げた場合も警察へ連絡しますか?
連絡が必要です。動物が逃げた場合でも交通事故に変わりはないため、日時・場所・動物の種類・車の損傷状況を110番または警察署へ報告します。
Q3. イノシシをはねた後、道路脇へ移動させてもよいですか?
自分で触れたり移動させたりしないでください。負傷した野生動物は暴れる危険があるうえ、感染症の懸念もあります。#9910などへ連絡して指示を受けてください。
Q4. 動物との衝突事故でハザードランプは必要ですか?
必要です。後続車に停止中の車があることを知らせ、追突などの二次事故を防ぐため、停車後すぐに点灯します。
Q5. バンパーが少し割れただけなら、そのまま運転できますか?
見た目だけでは判断できません。バンパーの裏にあるラジエーターやセンサー、タイヤ周辺が損傷している可能性があるため、異音・液漏れ・警告灯の有無を確認してください。
Q6. 動物との衝突でレッカーは呼べますか?
呼べます。自走に不安がある、車体の部品が外れかけている、警告灯が点灯した、液漏れがあるといった場合は、任意保険に付帯するロードサービスやJAFなどへ相談してください。
Q7. 動物との衝突は車両保険の対象ですか?
契約内容によって異なります。動物との衝突による車両の損害は単独事故の扱いとなるため、自賠責保険ではなく、任意保険の車両保険の補償内容を確認してください。
Q8. 高速道路で動物と衝突した場合はどうしますか?
ハザードランプを点灯し、可能であれば路肩へ移動して、乗員はガードレールの外側へ避難します。事故については110番、路上の動物や道路上の危険については#9910へ連絡します。
Q9. 動物の死骸を見つけただけでも#9910へ連絡してよいですか?
連絡して構いません。道路上の死骸は、後続車の急ブレーキや急な回避操作を招くため、道路管理者による対応につなげることが重要です。
まとめ
動物と衝突した直後は、車の損傷や動物の状態に気を取られやすいものです。しかし、私たちロードサービス事業者の視点から言えば、最優先すべきなのは「次の事故を起こさないこと」です。焦って現場を離れようとせず、安全確保、通報、車両確認の順で対応してください。
- 動物と衝突した車は、安全を確保できる場合に限り、路肩や待避場所へ移動します。
- けが人がいる場合は、車両の移動より119番通報と救護を優先します。
- ハザードランプを点灯し、後続車に事故を知らせます。
- 鹿、イノシシ、クマなどの野生動物には近づかず、素手で触れません。
- 事故は警察へ連絡し、路上の動物や危険は#9910へ通報します。
- 液漏れ、警告灯の点灯、タイヤの損傷、視界不良、部品の脱落がある場合は自走しません。
- 判断に迷う場合は、無理をせずレッカー・ロードサービスを手配します。
動物との衝突事故では、「少しなら走れる」という判断が大きなトラブルにつながることがあります。安全な場所へ退避できたら、車両の状態を落ち着いて確認し、必要に応じて専門のロードサービスへ相談することが、乗員と周囲の安全を守る最善の対応です。





